韋駄天迷宮



INDEX新着情報情報迷宮韋駄天資料室韋駄天掲示板韋駄天リンク

情報迷宮

[<<] [情報迷宮INDEXへ戻る] [>>]
▼ マハティール in Tokyo

●グローバリゼーションは正しいか?

 98年6月2日、マレーシアのマハティール・ビン・モハマッド首相は、「国際通貨研究所」の第5回・東京シンポジウムで演説を行った。以下はその要約である。

 もし誰かがある国の通貨を下落させ、破産させることができるなら、その国の存続理由とは何でしょうか? いわゆる“アナリスト”たちは「アジア通貨の急激な下落は、経済基盤が弱いからだ」と容赦ない批判を浴びせています。しかし、はっきり申し上げれば、アジア経済崩壊の張本人は投機家、そしてヘッジ・ファンドです。

 アジア通貨への攻撃は昨年の夏に始まりました。その直前、IMFのミシェル・カムドシュ専務理事は、マレーシアについて「健全な国家運営を行っており、経済基盤もしっかりしている」と述べていました。昨年6月17日、つまり通貨攻撃が始まるちょうど2週間前、IMFはマレーシアに衛生健康法案を提示しました。それだけでなく、IMFはマレーシアの経済基盤を称賛し、投資家に「マレーシアは市場的に信頼できる国である」と紹介していたのです。

 私が今、こうしたことを申し上げているのは、極端な「マーケット至上主義者」たち、「市場は常に正しい」と考えている彼らを戒めたいからです。彼らはアジア諸国が今日危機に喘いでいるのは、国家運営のミス、そして経済基盤の弱さにあると考えています。

 私は単に選挙で選ばれた指導者にすぎず、彼らアナリストは明らかに私より頭の良い人々でしょう。ですから、彼らは知っているに違いありません。アジア諸国の経済成長はこの10年に始まったことではなく、40年来続いていることを。そしてこの成長スピードは人類史上かつてなかったものであることを。恐らく彼らの中には、私の孫の世代の人もいることでしょう。ですから、私は彼らに思い起こしてもらいたいのです。彼らが今日を述べている不平、指摘している問題は、私たち自身、彼らの頃に指摘していた不平であり問題だったことを。

 この1年間、通貨・金融は混乱し続けており、彼らは多くの主要原因を挙げています。汚職、独占、馴れ合い資本主義、不十分な人的資源、全く低レベルの銀行システムなどです。しかし、これらは昔から指摘されていた問題です。そして、それにもかかわらず、私たちは人類史上かつてないほど早い、長期にわたる成長を遂げることができたのです。それゆえ、通貨下落、経済危機の真の原因は別の場所にあると考えねばなりません。

 措置を取るべき場所は多く存在します。そして、国際レベルでは、国際金融システムを根本的に改革すべき時期に来ているようです。それは通貨安定を確実にし、利益目的のためだけに通貨を売買する行為を抑制するためです。

 もう一度申し上げますが、私たちが国際貿易を継続しようと考える限り、通貨システムを変更する必要があります。西洋諸国の指導者が集まり、ブレトンウッズ合意を結んだのも、通貨間価値を決定するシステムを確立するためでした。しかしその後、西洋諸国の中には、競争力を高めるために自国通貨を切り下げる国が現れました。その結果、変動相場制が登場し、そこから利益を上げる通貨市場も出現したのです。

 でたらめな先物取引が発明されたことにより、貿易のために相場を安定させようという動きが封じられてしまいました。そして、短期で大量の資金を扱う通貨投機家が登場したのです。通貨を自由に上下できるシステムが作られ、通貨価値は文字通り数秒で決定されるようになりました。こうしてインドネシアのルピアは一気に600パーセント下落し、その後数日で200パーセント回復するという動きを見せたのです。ルピアは現在でも一日、あるいは半日で100〜200パーセントの上下を繰り返しています。

 インドネシアは2億2000万人の勤勉な国民を抱える巨大な国です。その国の全資産価値が一気に6分の1まで下落することがあってよいのでしょうか? もし誰かがある国の通貨を下落させ、破産させることすらできるとすれば、その国に存続理由などあるでしょうか?

 つまり現在のシステムは、システムと呼べるとしての話ですが、混乱しており、頼りなく、破滅的です。世界貿易を影の市場関係者に任せてよいのでしょうか? 現在のシステムでは、情報は影の人々にしか伝わりません。このシステムではヘッジ・ファンドだけが利益を得ることになり、製品・サービスのコストは上がる一方です。

 為替トレーダーが受け取る莫大な利益以外、為替取引にメリットなどありません。一方、彼らが標的とする国や地域の経済は大きなダメージを受けます。

 市場関係者が為替取引によって力を得、各国政府を手なづけている現状は全く許し難いものです。

 あらゆる点で言えることは、国際金融システムには、何よりも為替相場の安定が必要だということです。もちろん、私たちは金本位制に基づくブレトンウッズ体制に戻ることはできません。しかし、新しい国際金融システムを提案できないとすれば、世界の金融・経済の専門家たちは無能をさらけ出す結果となるでしょう。

 固定相場制はもはや不可能であり、現実的でもありません。しかし、政治・経済・社会状況から、通貨価値を決定することは可能です。経済には様々な指標が存在し、経済力を数量化することは可能です。通貨にも同じことが言えます。ある国の経済力を数量化する方法を考え出すことは、決して世界の経済学者の手に余る仕事ではない筈です。

 もちろん私が今述べていることは提案にすぎず、これを聞けば金融・経済の専門家たちは笑うことでしょう。しかし、この提案により、少なくとも為替トレーダーは銀行を食い物にはできなくなるでしょう。

 いくら通貨を上下させても、本質的な問題解決にはなりません。なぜなら、生産性向上には様々な要因が存在するからです。

 私たちは容赦ない力でグローバリゼーションに向かっています。グローバリゼーション・自由化・規制緩和は、人権問題・環境問題・労働問題と結び付いた形で先進国から提案され、それは表向き世界をより豊かにするためと言われています。しかし、これまでのところ、グローバリゼーションによって利益を得たのは先進国だけのようです。

 恐らく発展途上国の人々は、世界で最も有力な巨大企業が自分たちの国でも営業してくれることを喜ぶべきなのでしょう。世界の巨大銀行に口座を開くことができる、世界の巨大メーカーの車を買うことができる、世界のホテル・チェーンもファーストフード・チェーンも入ってくる、というわけです。

 グローバリゼーションが行き渡った場合、国民政府は存続すべきでしょうか? 市場関係者が各国政府を動かしています。そうであれば、国民が選挙をして指導者を選び出すことに意味があるでしょうか?

 私が申し上げた国際問題は、各国が早急に取り組まねばならない問題です。少なくとも各国は真剣に論じなければなりません。国際問題の決定プロセスは全く民主的ではありません。しかし、国際問題を非民主的に決定しているこの同じ人々が、民主主義を提唱しているのが現状です。国際問題における民主主義は、国内における民主主義と同様に重要なのだということを認識すべき時です。

●性悪な“新”資本主義者たち

 98年6月4日、マハティール首相は、日本経済新聞が東京で開催した国際会議「グローバリゼーション・規制緩和の世界におけるアジアの将来」で演説を行った。以下はその要約である。

 「人権」というテーマで、発展途上国経済への攻撃が正当化される場合があります。この攻撃は投機家、ヘッジ・ファンドによって行われ、その後、外国の銀行・企業が発展途上国の経済を乗っ取る仕組みになっています。

 世界では、絶えず言論の自由や人権について語られています。しかし、何百万もの人々が失業し、困窮している状況について、彼らが人権活動家が何の同情も示さないのは奇妙ではないでしょうか? 彼らはこの問題について単にアジア各国政府が悪いと決めつけ、政府指導者の社会的犯罪行為をあげつらっています。アジア各国政府は40年間、国を発展させ、何百万もの職を創設してきました。しかし、人権活動家は、こうした発展すら汚職政治による汚い産物であるとしか考えていません。

 国際機関は、アジア諸国に「改革」を要求しています。それは、利率引き上げ・緊縮財政・増税などを意味します。「各国政府はあらゆる補助金制度を廃止し、独占を改め、輸出規制を行わない」というのが要求内容です。

 IMF救援策を受けたアジア諸国は、最終的には経済を開放せざるを得ず、そうなれば外国企業は、所有権や経済活動範囲について何の規制も受けなくなります。その結果、アジア諸国の通貨・株価は下落し、その国の銀行・企業は外国企業による格好の買収標的となります。しかし、先進国はアジア諸国に「外国企業による買収は経済回復につながる」と言うだけなのです。

 古典的資本主義の全盛期、貧しい労働者を搾取することは人権問題と見なされました。その結果、共産主義革命や暴力的な政府転覆活動が起こりました。そこで、西洋資本家たちは労働者に優しい顔を見せるようになりました。団結権を認め、給料を上げ、ボーナスを支給し、労働時間を短縮し、休日を増やし、住宅を改善し、医療を整備しました。これらの必要性が認識され、認められたのです。

 「資本主義」という言葉は、次第に「自由市場」という言葉に取って代わられました。「私企業の醜い資本家」というイメージは消え、遥かに優しい「経営手腕があり、公共の福祉にも奉仕する資本家」というイメージができあがったのです。

 共産主義終焉と共に、独立国民国家という概念も崩れ去りました。内政不干渉という原則は捨て去られ、超大国は他国に干渉する権利を主張し始めました。市場を優先させるためには民主主義すら犠牲となり、各国指導者、その政策も市場を優先させる形で決定されていったのです。

 「人権侵害が報告された国には干渉すべきである」と最初に言い出したのは、カーター大統領でした。こうしてGATT、WTOの活動と、人権・労働権・環境問題が結び付けられるようになりました(特に労働権に関しては、先進国と競合している発展途上国の低賃金が問題にされました)。

 人々の福祉に突然こうした懸念が表明され始めたことには、裏事情があります。標的は発展途上国でした。

 当時、発展途上国は先進国に追いつこうと努力し続けていました。発展途上国の製品は質が良く、先進国の製品とも十分に競争できるものでした。しかし、貿易と人権とを組み合わせれば、発展途上国の生産コストを上昇させることになり、それによって発展途上国の輸出製品・競争力を全く失わせ、場合によっては輸出すらできなくさせることができたのです。

 人間の顔をした人権家の背後には、醜い資本家の姿があります。彼らは人間的でも何でもなく、発展途上国の人々をより貧しくすることだけを狙っています。

 グローバリゼーション、規制緩和というプロパガンダと共に、発展途上国が抱える様々な問題がクローズアップされました。腐敗・汚職・馴れ合い政治などです。

 アジア諸国の指導者はこれまで国を発展させ、競争力ある製品を生産できるよう国を指導してきました。しかし、それらは忘れられ、“新”資本主義者と結託している国際メディアが流す情報だけが世間に溢れました。その結果すぐに、発展途上国の人々は自らの政府に反感を持つようになり、「政府を転覆せよ」というコーラスに同調するようになりました。それだけでなく、「自国を外国の搾取に任せよう」と言い出したのです。

 為替トレーダーたちは、どんな国の通貨でも意のままに下落させることができると言われています。為替取引を行っているのは何もヘッジ・ファンドだけでなく、大銀行も行っています。こうした銀行の一つは6000億ドルの資本を有しています。こうした銀行と為替トレーダーたちが手を結べば、ほぼ30兆ドルの資金になることが確かめられています。

 “新”資本主義者は数兆ドルを自由に動かすことができ、そのため、どんな発展途上国政府も対抗することができません。彼らはメディアも手中に収めており、世論を形成し、反対意見を抑えつけ、都合のよい法案を作り出し、彼らの言う新世界秩序を広めることができます。もし彼らが「グローバリズムが良い」と言えば、あらゆるメディアがそれに習い、そうでない意見を言うことは許されなくなります。

 アジア諸国の経済は、外国ヘッジ・ファンドに支配・運営されようとしています。アジア各国政府はヘッジ・ファンドの要求を呑まざるを得ません。なぜなら、ヘッジ・ファンドには勝てないからです。

 しかし、アジア人は、こうした外人に徐々に反感を持ち始めています。外人はアジアを再び植民地化しようとしています。アジア人は自国企業を外人に乗っ取られ、苦い思いを多くの方法で表明しています。そう遠くない将来、彼らは自国経済に今一度、独立を取り戻そうとするでしょう。これは新しい解放戦争です。人々は暴力は避けたいと考えていますが、それも止むを得ない時が来るでしょう。なぜなら、“新”資本主義者たちは人々のサインを見逃しているからです。一種のゲリラ戦が起こり、それは誰の利益にもならないでしょう。

 もちろん、アジアはこのような状況にならないかもしれません。私もアジア・欧米間で健全な経済競争が保たれることを望んでいます。しかし、“新”資本主義者は世界を支配するチャンスを逃しはしないでしょうし、そのために多くの資金を投入しています。彼らの国が彼らを規制しない限り、世界・アジアの将来は平和で繁栄したものとはならないでしょう。

[<<] [情報迷宮INDEXへ戻る] [>>]


HOME新着情報韋駄天資料室韋駄天リンク掲示板
 

Presented by. AKIO KIMURA (idatenmail@gmail.com)