●111便墜落後の出来事
1998年10月11日の夜から12日の早朝にかけて、スイスのチューリヒのクローテン郊外にあるスイス航空本社に強盗が入った。侵入した強盗は、書類と金を盗って行った。
似たような事件が最近その近辺で発生していたが、スイスの日刊金融紙『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(新チューリヒ市民新聞)』は、「犯人は、9月2日に、スイス航空の111便がノヴァスコシアの沖合に墜落し、229人が死亡した事件の書類を探していた」と報道した。
111便には、妨害工作や爆弾のターゲットになった可能性があった。爆弾であるとしたら、例えば、国家の諜報機関などの、高度な技能を持つ工作員によってのみ仕掛けることができるようなものだった。
元MI6のスパイで、MI6を脱走したリチャード・トムリンソンが、その便の座席を予約していたということが、イギリス諜報機関がその便を狙った動機ではないかと思われる。
トムリンソンは、現在スイスに隠れていると言われている。
彼はその時、NBCニュースから、独占インタビューのためにアメリカに招待されていて、スイスに帰るのに、その不運な便を予約していた。
しかし、彼はその便に乗ることはなかった。アメリカに入国しようとした時、ただちに強制送還されたからである。
スイス航空111便は、スイスのジュネーブに向けて飛び立った2、3時間後、ハリファックス国際空港に緊急着陸しようとしたが、カナダの海に墜落した。
おかしなことに、強盗事件が起こった1週間後の10月22日になるまで、『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング』にはその報道が載らなかった。
もっとおかしいのは、同じく10月22日の死亡記事である。
『デア・ブント』というスイスの小規模の地方日刊紙に、「10月13日、乗っていたヘリコプターが墜落し、グイド・ヒルニー死亡」という記事が載った。
ヒルニーは、スイス連邦航空機事故調査局の検査官長である。ヒルニーの見解はあちこちで引用され、テレビにたびたび出て、スイス航空111便の事故調査の公式発表を行っていた。
ヒルニー自身が調査に関わったかどうかはわからないが、カナダ当局が、その調査を担当した調査官に対し、調査についての口外を許可しなかったということがわかっている。スイス政府の上役にさえも、言わせなかったのである。
●スイス銀行のMI6スパイ
10月11日、イギリスの週刊誌『サンデービジネス』に、トムリンソンのインタビュー記事が載った。
トムリンソンは、そのインタビューの中で、イギリスを繰り返し非難した。
それは、イギリスの諜報機関が、ヨーロッパの同盟国に対し、攻撃的な方針のスパイ活動を行っているというもので、特に経済と銀行関係がひどいということであった。
トムリンソンは、『サンデービジネス』に対し、次のように語った。
「イギリス政府の各諜報機関の調整をしている『諜報局合同委員会』が作成した、MI6公式任務“必要事項”によれば、MI6の主な仕事は、ヨーロッパの経済と事業のスパイ活動です。」
「その必要事項を見た時、私はほんとうに驚きました。そこに書かれていた国の多くは、同盟国とされているもので、特に、私たちのヨーロッパの仲間である国が多かったからです。それはアルファベット順に載っていて、フランス・ドイツ・イタリア・スペイン・スイスが含まれていました。」
トムリンソンは、MI6が、スイスの最大の銀行である、スイス・ユニオン銀行のスパイをしているという主張もしていた。
また、トムリンソンは、ドイツの中央銀行である連邦銀行に、MI6のスパイが1986年に配属され、現在までスパイ活動を続けているということを暴露している。
●公共と民間の統合
『サンデービジネス』は、以下の事実を指摘している。
「イギリスの諜報機関の上級職員が、イギリスの有力な銀行や、会社の重役になるということは、きわめてよくあることである。それによって、諜報局は民間部門の力を利用し、民間部門は、諜報員の情報によって日常的に恩恵を得ているのである。このような仕組みは、実質的にイギリス国家と民間部門の役割の区別をぼやけさせる。自由市場という見せかけは、もう通用しなくなっている。」
トムリンソンは、ロンドンのシティにある大手銀行、ミッドランドバンクが、“リスニング・バンク”と呼ばれていて、完全にMI6の資産であることを暴露した。スコットランド・ロイヤルバンクも、イギリスのスパイ活動に幅広く利用されている。
MI6は、イギリスの銀行や他の企業に、恒常的に機密情報を流しているのである。
さらにトムリンソンは、『サンデービジネス』に対し、連邦銀行にいるMI6のスパイから受け取った機密情報を、いくつかの商業銀行とマーチャントバンクに流したことを暴露した。その中には、ミッドランドバンクとスコットランド・ロイヤルバンクも入っていたということである。
この諜報機関と民間部門の統合は非常に緊密である。
CXというコードネームの機密情報レポートがあって、これはMI6が、MI5などの他の諜報機関用に作るものであるが、そのレポートが、銀行や他の民間団体の連絡役の職員に、日常的に渡されているということである。
|