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▼ 類人猿に法的権利を与えるニュージーランド

●人間という種の終焉


 1999年1月、アメリカ副大統領アル・ゴアは、ワシントンで“政府を再発明する”という会議を開催した。
 会議の中で、ゴアは、「ニュージーランドはモデル国家である。他の国も見習ってもらいたい」と表明した。ゴアの言葉の通り、ニュージーランドは、現在ゴアの出す合図に従っている。
 1993年6月14日、ゴアは国連で演説を行ったが、ゴアはその時に“人間免除主義者”を攻撃した。“人間免除主義者”というのは、「人類は、動物に比べると、生態系の影響はあまり受けない」と主張する人たちのことである。
 ニュージーランドは、大型類人猿に対して、人間と同じような法的権利を、世界で最初に与える国になるかもしれないのである。

 ニュージーランドの科学者・弁護士・哲学者38名は、動物福祉法案に修正箇条を付け加えることに成功した。動物福祉法案は、ここ数週間のうちに投票が行われる予定になっている。
 その修正条項は、大型類人猿(ゴリラ・チンパンジー・オランウータン・ピグミーチンパンジー)に、生存権・残酷な扱いや侮辱的な扱いを受けない権利・きわめてソフトな実験にしか使われない権利を与えることを規定している。また、“正当な法的手続きなしに投獄されない”自由を認める規定を設けている。
 この後者は事実上、大型類人猿を動物園に入れることの禁止である。そして、弁護士のチームが作られて、法廷で類人猿のために争うようになることを明らかに意味するものである。
 修正条項の追加を推進したニュージーランドの人たちは、このように述べている。
「類人猿のDNAの98.4%は、人間と共通のものである。類人猿には自意識も個性もあり、感情による絆があり、知性や基本的な言語能力もある。」

 ニュージーランドにおけるこの動きは、“大型類人猿プロジェクト”と呼ばれるものがが、最近推進してきた構想である。
 このプロジェクトは、1990年代の初めにイギリスの有力な“類人猿”(類人猿を侮辱する意図はありません)フィリップ殿下の共謀者仲間が設立したものである。
 大型類人猿プロジェクトの活動家には、オーストラリアの“動物解放”宣伝家ピーター・シンガー、オックスフォード大学のダーウィンの熱烈な信奉者リチャード・ドーキンズがいる。
 彼らは、プロジェクトが究極的に目指しているのは、人間と動物の“種の障壁”や“種の不連続性”という観念を取り払うことだと言っている。そして、シンガーは、“道徳的関心の領域”を徐々に広げていくべきであると言っている。まずは大型類人猿から始めて、他の種にも適用させていくということである。
 シンガーは、大型類人猿プロジェクトは、「女性や同性愛者にも同じ権利を与えるべきだ」と要求した運動と同じであり、「チンパンジーの命は“重大な欠点のある人間”よりも価値がある」と主張している。
 これと一致するが、シンガーは、「寒気のするようなやり方で、安楽死を弁護している」と言われている。
 「ナチスは恐るべき犯罪を犯した。しかし、だからと言って、ナチスが行ったすべてのことが悪いというわけではない。我々は、ナチスが行ったからと言って、安楽死を非難することはできない。それは、ナチスも行ったからと言って、新しい道路を作ることを非難できないのと同じである。」

 フィリップ殿下の大型類人猿プロジェクトの活動家グループは、ヒトラーが行った以上に、人間という種の終焉を効果的に要求している。
 人間という種の存在は、何かを創造する力を行使するということにかかっている。創造する力を行使できるのは人間だけであり、動物も、類人猿も、人間以外の生物には不可能である。
 フィリップ殿下の部下たちは、「究極の目的は、人間の種の絶滅である」ということを隠していない。
 コロラド大学のデール・ジャミーソン教授は、1993年に書いた論文(大型類人猿プロジェクトの活動家たちの小論を、一冊の本の長さに編集したものに寄稿された)の中で、ジャミーソンは、一神教の信仰(キリスト教・ユダヤ教・イスラム教)を攻撃した。ジャミーソンは次のように書いている。
「一神教は、自然の中で特別な位置を人間に与えている。人類は多くの種の中の一つである。多くの種の“上”にある種ではない。人間は、長期的に見れば、他の絶滅した種と同様の道をたどる運命になっている。そして、“人間が絶滅するのは損失である”ということを直接に裏付ける証拠は何もない。」

 ゴアのニュージーランドが、このような反人間的な企てを率先して行っているのは、合法的なことである。なぜならば、ニュージーランドがこのような反人間的な蹂躙を展開しているのは、ゴアが大変称賛する政策によって、長年の間にもたらされた結果だからである。


次のターゲットはアメリカか?

 ニュージーランド議会のこの構想は、ニュージーランドだけではなく、世界的な意義を持つように意図されたものである。
 修正条項の中心的な起草者である理論生物学者デビッド・ペニーは、「この意図は、他の国もこれを模範とすることができるような先例を作ることである」と宣言している。
 そして、さらにこの“大型類人猿”たちは、「大型類人猿の権利に関する国連宣言」を実現しようとしているのである。これは、“アメリカ独立宣言”を逸脱したやり方でモデルにした代物である。

 イギリスの『ニュー・サイエンティスト』誌は、次のように書いている。
「ニュージーランドに“先例”を作ることの最大の狙いはアメリカである。アメリカには、エイズワクチンや、他の病気の研究をするために、実験用に捕まえられているチンパンジーが約1700頭いる。
 アメリカでは、チンパンジーの法的権利を獲得するための動きが進行中である。その実現のためには、新たな法案が導入されるわけではなくて、慎重に選んだチンパンジーの訴訟を行って、先例を作ることで実現を図ろうとしているのである。
 もしニュージーランドのチンパンジーに法的権利が与えられたら、アメリカの裁判官は、アメリカのチンパンジーにも同様な権利を与えるような判決を下すだろう。」


“バナナの追求”

 しかし、ニュージーランドのその構想と、その背後にあるもっと広範囲な大型類人猿プロジェクトは、思いがけない方面からの反対を受けている。
 『ニュー・サイエンティスト』は、ニューエイジや、はやりのエコロジーの話題についてしばしば大きく取り上げ、大型類人猿プロジェクトを促進するような記事を掲載してきた。しかし、その2月13日号には、このような論説が掲載されている。
「人間と、我々の親戚である類人猿の間には、多くの社会的、身体的類似がある。しかし、両者の心の働き方には大きな違いがあり、道徳や感情の点においても、大型類人猿と同等であるという浅薄な信念を支持するのは困難である。
 チンパンジーなどの大型類人猿は、抽象的な思考をする能力を持っていない。だから、彼らがこの世界における、道徳や倫理の真の実践者であるとは思えない。」

 さらに、『ニュー・サイエンティスト』は、「チンパンジーのDNAの98.4%は人間と同じであって、だから両者の心理は非常によく似ているはずである」という“流行”の主張の誤りを暴露している。
「ゲノムは、ケーキの作り方の説明書きではないのである。……
 DNAによって、感受性や道徳的な価値を測るのであれば、化学的な生命の関連性があるからという理由で、我々は名誉ある人間性を、ラットやハドック(またはモンツキダラ)にまで広げなければならなくなるだろう。……
 もしチンパンジーが、他の野生のチンパンジーや人間を殺したとしたら、我々は、法律家の集団を雇いたいと本当に思うだろうか? そして、もし名誉ある人間性をすべての動物にまで広げるならば、ガゼルがライオンに対して権利を持つようになるというのだろうか?」

 フラン・デ・ワールは、ジョージア州アトランタのヤーキーズ地域霊長類研究センターの1人だが、このセンターは、類人猿を含めたある他の秘密のプロジェクトを行っているということで知られている。
 このような人物までもが、大型類人猿プロジェクトをこき下ろしている。デ・ワールはこのように述べている。
「もし、人間と大型類人猿の連続性ということを根拠に、権利の数々を与えるようとするならば、類人猿とサルとの間の連続性についても問題にしなければならなくなる。となると、最終的には、実験用のラットにも権利を与えるということになる。
 犬も強い愛情を持つし、猫にはまた違った性格があるように見える。しかし、だからと言って、人間と犬・猫との“連続性”について論じようとする人はほとんどいないではないか。」

 ロンドンの『デイリー・テレグラフ』は、大型類人猿プロジェクトは、“食えない”プロジェクトであるという見方をしている。
 2月11日、『デイリー・テレグラフ』は、H・G・ウェルズの“来る世相”をもじった“来る類人猿”というタイトルの社説を載せた。その社説は、「大型類人猿プロジェクトは、重大な過ちで、法律のペテンである」と述べている。
「人間と動物との存在論的区別を無視することはできない。これは、ユダヤ・キリスト教的起源を受け入れない人でも同じである。……
 人間は、すべて人格を持った“パーソン”である。人間は、善と悪の区別をすることができる。動物は、道徳的な意味において“パーソン”ではない。したがって、動物に人権を与えることはできないのである。……
 誰が、野生の類人猿に生存権を守らせようとするだろうか。」

 同じ日に、ロンドンの『ガーディアン』は、ある漫画を載せた。
 それは、一匹の類人猿が、野性的なジェスチャーで「生存、自由、バナナの追求!」と叫んでいるものだった。

 大型類人猿プロジェクトを一時担当していたあるイギリスの科学担当記者が、コメントを寄せた。
「ニュージーランドは、アル・ゴアの好きな国に違いない。ニュージーランドは緑が多くて、人がいない。……アル・ゴアは、私が好きな人間の1人ではない。」

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