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▼99年ダボス会議2:新聞報道より

【1】クローズ・シュワブ理事長に聞く(99.1.27 日本経済新聞)

 あすからダボス会議
 グローバル化に責任を
  ――クローズ・シュワブ理事長に聞く


市場経済の「誤用」排除必要

 「ダボス会議」で知られる毎年恒例の世界経済フォーラム総会が28日から6日間の予定でスイスのダボスで開催される。ジュネーブの本部で、創設者のクローズ・シュワブ理事長に、今年のテーマなどを聞いた。

――今回、会議のテーマとして「責任あるグローバル化」を選んだのはなぜか。
 「世界はグローバル化の最終段階に達しつつあると考えている。グローバル化を推進しているのは技術や経済など、ある意味で冷酷な要素といえる。ここに『心』を導入し、補完するのが我々の責任だ。我々はグローバルなルールを整備することなしにグローバル経済を築いてしまった。インターネットなど情報技術の急速な進歩によって加速するグローバル化に対応するには、ルール作りへの努力も急ぐ必要がある」

――自由な市場の行き過ぎが社会的な問題を招いているとの意見もある。
 「自由な市場や起業家精神が生む経済的な豊かさが我々の繁栄の基盤にある。しかし、それらが大切なのは世界の公共の利益というより重要な目標のためだ。グローバル化の過程で社会が分断されたという議論もある。一部の人たちではなく、多くの人々が利益を受けなければグローバル化は成功とはいえない」

――アジア金融・通貨危機はグローバル経済の失敗例か。
 「アジア危機は市場経済の『失敗』ではなく市場経済の『誤用』だったと言える。投機目的だけの資金の流れといった『誤用』を排除する方法を将来、見つけ出す必要がある。金融分野での技術革新については(危機に陥った米ヘッジファンドの経営に参加していた)ノーベル賞受賞学者のような専門家でさえ完全に理解できていない。理解を深め透明性を高めなければ世界のシステム全体を破壊しかねない」

――冷戦時代に東西の橋渡し役を果たしてきた世界経済フォーラムの今後の役割は。
 「地域と世界を結ぶことが重要になる。我々が直面する様々な問題は、政府のみでも産業界のみでも解決できない。経済活動が国境を超えた今、一国の問題は世界の問題に転じる。経済だけでなく社会、政治の問題も国際的な対応が求められている。世界経済フォーラムは今後も重要な役割を果たしていくだろう」

――グローバルな市場のあり方以外にも課題は山積している。
 「例えば生物倫理の分野が挙げられる。遺伝子工学の進歩は将来、大きな政治的・社会的問題を浮上させる恐れがあるが、雇用問題や社会保障問題などに比べると関心は薄い。こうした問題に我々は注意を促している」

――世界経済フォーラムの世界競争力ランキングでは日本の低迷が目立つ。
 「日本の産業界と日本の経済とを区別する必要がある。日本の産業界のダイナミズムには驚かされる。日本経済も深刻な構造問題に直面したが、政府は正しい政策を下したし、世界の中で自らが果たすべき役割を確認したと言える。日本が現在の不況からいち早く抜け出せば、他のアジアの国も経済危機から立ち直れる」
(聞き手は 国際部 岐部秀光)  


 クローズ・シュワブ氏 38年ドイツ生まれ。米ハーバード大などで学ぶ。71年に世界経済フォーラムを設立。72年よりスイスのジュネーブ大教授。経済学博士。


【2】ダボス会議 5カ国討論(99.1.30 日本経済新聞)

 金融危機回避へ緊密協力
 ダボス会議 5カ国討論



 【ダボス(スイス)29日=三科清一郎】ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は29日、日米欧主要五カ国の蔵相・次官級による討論会を開き、各国景気の動向や世界の通貨・金融危機への対応などについて意見交換した。この中で出席者は(1)世界経済の安定確保のため先進国はバランスのとれた経済成長を目指す(2)新興市場などの金融危機の回避・解決に向け緊密な協力体制が必要――との認識で一致した。討論会には榊原英資・大蔵財務官、サマーズ米財務副長官、フラスベック独大蔵次官、ブラウン英蔵相、ストロスカーン仏蔵相が出席した。発言要旨は以下の通り=敬称略。

・先進国経済

榊原 信用収縮などの影響で日本経済の回復には時間がかかるが、99年央までには景気は底を打つだろう。長期金利の高さが問題という見方は間違いで、きわめて低かった実質金利が正常な水準に戻ってきたということだ。金融危機を脱してきたことで、これからアジア支援を強化できる。

サマーズ 先進国の均衡のとれた成長が必要だ。米景気は多少のぶれはあっても拡大基調を維持する。財政政策の効果でインフレ懸念も後退した。ただ、貯蓄率を高める必要はある。(日本は景気底打ちというが)成長回復がはっきりしたら、称賛を送ろう。

フラスベック 世界の経済危機への対応では、各国が負担を分かち合うことが必要だ。欧州では輸出の伸びが鈍化してきており、米国と反対に消費性向を高める必要がある。欧州が成長率を高めることで為替相場の変動も避けることができる。農業などグローバル化に立ち遅れている分野の構造問題解決も欠かせない。

・金融危機 通貨体制

ブラウン アジアやブラジルの教訓から何を学ぶかが肝心だ。金融システムに(情報開示による)透明性を欠いたことがアジアの危機を招いた。グローバルな金融制度の枠組みを年内に作るため、夏までに関係国間で合意に達したい。

フラスベック (中南米の金融不安の)震源地であるブラジルの問題は解決していない。ブラジルの金融不安は周辺国や世界全体に悪影響を及ぼす恐れがある。それを避けるために各国が協調して解決に取り組むことが必要だ。

ストロスカーン 国際通貨基金(IMF)の暫定委員会の機能を強化するなど、国際機関の責任を強めるべきだ。

榊原 世界の資本市場は(金融危機の引き金となりかねない)膨大な流動性を依然として抱えている。民間資本の流れを監視する体制を構築し、金融危機に陥った国が最後によりどころにできる機関を確立するべきだ。

サマーズ ヘッジファンドの取引を規制すべきだという意見が多いが、特定の投資家だけをスケープゴートにしている。幅広く大手投資家の取引を監視・監督する枠組みの一環として(ヘッジファンドの問題を)考えるべきだ。

ストロスカーン 通貨体制に関する国際的議論は軌道に乗ってきている。世界の経済状況は脆弱だが、ユーロの導入など前向きな動きもある。ただ、(ユーロの安定を確保するため)新たな協力が必要だ。ユーロ圏外の国を含めて、欧州は税制調和などの措置を講じる。

サマーズ 欧州諸国が通貨統合を成し遂げたことを称賛したい。米国にとっても(欧州は)活力ある貿易相手となる。

榊原 (アジア支援の新宮沢構想などを通じ)円経済圏を形成しようというのは非現実的で、今後もアジアはドル圏であり続けるだろう。円の国際化は5〜10年かかるだろうが忍耐強く進めていく。

 資本規制で思惑に差

 「責任あるグローバル化」をテーマとした今年のダボス会議の日米欧五カ国蔵相・次官級の討論会では、通過・金融市場の混乱に終止符を打ち世界経済を安定成長軌道に戻すために、先進国としての責任を強調する発言が目立った。ただ、資本取引規制など細部では各国の思惑の違いも鮮明になった。

 ストロスカーン仏蔵相が、かねて提案している外為市場の目標相場圏構想について「実現の可能性はないと決めつけてはならない」と強調するなど、日欧からは新たな通貨安定策や資本取引の監視体制構築を支持する発言が出た。これに対しサマーズ米財務副長官はヘッジファンド規制への反対を明言。先進国間の協調の重要性は認めつつも、「自国の経済が信認されるよう各国が努力することが大事」と指摘するにとどめ具体的な提案はしなかった。

 昨年の会議で「日本は主要国としての経済的責任を果たしていない」と批判を浴びた榊原財務官は、日本が金融再生に努力した点を説明するなど、名誉ばん回に懸命だった。

 しかし、かねて日本の対応に厳しいサマーズ副長官は「勝利宣言するのはもう少し先のほうがいいのでは」とチクリと刺し、あくまで政策の実行を見極めたいとの慎重姿勢を示した。
                    (ダボス=木村貴)

 参考:1999年度ダボス会議三人の主役
    http://www1.sphere.ne.jp/all/document/davos-big3.htm


【3】世界経済フォーラム年次総会(99.1.31 讀賣新聞)


 危機回避のカギ 今年も日本

 各国の政財界の要人が一堂に会して意見交換する「世界経済フォーラム」の年次総会(ダボス会議)が、スイス東部のスキーリゾート地、ダボスで1月28日から6日間の日程で開かれている。今年のテーマは「責任あるグローバル化」で、世界の経済危機の回避策が最大の論点だ。参加者の間からは「日本の景気が回復しないと、世界経済の波乱要因となる」として、日本の責任を問う声も上がっている。(ダボス 松田陽三)

 米の株式市場 暴落警戒感も

 「世界経済の危機に対処するため、我々は日本の手助けを必要としている」(アル・ゴア米副大統領)。「日本の景気回復には悲観的だ。日本が今後5年間の世界の問題となる」(米マサチューセッツ工科大学のルディ・ドーンブッシュ教授)。会議では、今年も日本に対する批判や期待の表明が相次いでいる。

 昨年は、日本の景気低迷と政府の無策が各国参加者の攻撃の的になり、「世界経済に対する責任を果たしていない」と、集中砲火を受けた。とりわけ、日本の大物政治家が一人も出席せず、日本政府の顔が見えなかったことが、参加者の不満に油を注いだ。通貨切り下げが懸念されていた中国の朱鎔基首相がこの場所で、「我が国は人民元を切り下げない」と太鼓判を押して、一躍、ヒーローになったのと好対照だった。

 今回は日本の政治家では自民党の加藤紘一前幹事長が初参加し、アジア経済をテーマにした分科会のパネリストを務める。加藤氏が参加を決めたのは、昨年の会議に出て「日本たたき」の激しさに驚いた経済人らが、当時、自民党幹事長だった加藤氏に「参加して日本の立場を説明してほしい」と要請したからだ。加藤前幹事長は「この会議は国際的なPRの場所だ。出席していないと、欠席裁判を受けてしまう」と、同会議の怖さを指摘する。

 同フォーラムの創設者でもあるクラウス・シュワブ会長が「この場での議論が、世界の議論をリードする」と胸を張るように、毎年この時期に開かれる同会議は、その年の世界の動向を占う場所ともなっている。

 日本問題、新興市場国の通貨危機防止策、新しい国際金融体制のあり方などと並んで、今年の注目を集めているのは、高騰を続けるニューヨーク市場の株価がバブルかどうかという問題だ。ローレンス・サマーズ米財務副長官らアメリカの政府当局者はそろって、米経済の好調さと経済運営の巧みさを強調し、株価暴落の懸念を否定しているが、会議参加者の間には警戒感が高まっている。

 ドイツ銀行のエコノミスト、ケネス・カーティス氏は「アメリカの株高は、マイナスの貯蓄率と巨額の経常赤字を背景にしている。米株式市場のバブル崩壊は世界経済が抱える危険の一つだ」と密告する。29日に開かれた「金融バブル。我々は何を学んできたか」と題する分科会は、日本の80年代のバブル経済と現在の米経済との比較が聴衆の関心を呼んだ。


【4】政治統合議論 盛り上がる(99.2.1 日本経済新聞)


 ダボス会議
 EU加盟各国のリーダー 政治統合議論 盛り上がる

 安全保障・税制に焦点 ユーロ実現の自信バネに


 通貨統合の次は政治統合――。スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、欧州の要人たちによる政治統合に向けた議論が盛り上がりを見せている。年初に単一通貨ユーロ導入を実現した自信をバネに、税制や安全保障など政治面の調和と一体化に歩を進める機運が急速に高まっていることを印象づけた。

 「近代国家の二本柱は通貨と剣(武力)。通貨はユーロで一つになった。次は剣だ」。イタリアのプロディ前首相は「ユーロ導入後の欧州」をテーマにした討論会でこう言い切った。

 プロディ氏は「ユーロ実現により、共通安保に懐疑的だった英国なども再考を促されている」と指摘。実際、昨年12月の英仏首脳会談ではブレア英首相が欧州連合(EU)の共通安保機構を提案、実現に向けて一歩を踏み出した。

 「ユーロ導入で世界は新しい時代に入った」(ストロスカーン仏蔵相)。今年のダボス会議で、ユーロ圏の指導者たちは自負を隠さない。何度か危ぶまれた通貨統合を実現にこぎ着けた自信。それが新たな目標である政治統合に向けた強気な発言の背景にある。

 欧州委員会のサンテール委員長は「北大西洋条約機構(NATO)は西欧同盟の柱だが、その中で欧州独自の安保体制も考えなければ」と強調した。

 同委員長は現在15カ国のEU加盟国の拡大にも改めて意欲を示し、「加盟20−25カ国、域内人口は5億人超に」と、将来像を確信に満ちた口調で描いて見せた。

 企業経営者からは「ヨルダン、アルジェリア、モロッコといった周辺諸国をEUの準加盟国に加えるべきだ」(ネスレのマウハー会長)とさらに積極的な意見も出ている。

 「中央銀行総裁の権限外ですが、元大蔵次官の発言として聞いてください」。こう冗談めかしながら、税制の調和について自説を大胆に展開したのはティートマイヤー独連銀総裁だ。「各国が(投資などを呼び込むうえで有利になるように)税制を競うのはいい。しかし不公正な税制は許されない」。国によって手続きが異なる現在の利子課税は資本市場の機能を損なうとも批判した。

 全会一致が原則のEU理事会の意思決定方法に対しては、「多数決原理の導入を」との発言が目立つ。一国だけでも反対すれば物事が前に進まない硬直性を見直し、意思決定を速やかにしようという機運が高まっている。

 「金融危機に陥った国が立ち直るための輸出を、米国だけが吸収し続けるのは無理」。ルービン米財務長官はダボスの本会議場での講演で強調し、欧州の内需拡大を求めた。通貨統合で欧州は域内総生産(GDP)で米国に迫る統一市場を作った。その分、世界経済への責任も重くなった。

 しかし、政治、特に経済政策に関して通貨統合参加国間の協調がうまくいかないようだと、責任を果たすどころか世界経済の混乱要因にもなりかねない。

 「現状のEU15カ国の制度調和だけでも大変。まして拡大EUになったらもっと難しい」

 サンテール委員長は自らに楽観を戒めた。ダボスでの活発な議論が実を結ぶかどうか、。見極めるのはこれからだ。
(ダボスで、木村貴)  



【5】社説「交錯する日本への期待と懸念」(99.2.1 日本経済新聞)


 日本の経済と政策に対する各国の評価が微妙ではあるが明らかに変化を見せ始めている。

 各国の政治家、政策当局者、企業家、有識者など2000人余を集めて先週から開いているダボス会議(スイス)の空気は、日本へのいらだちと非難ばかりが渦巻いた昨年とは違って、懸念と期待が交錯したものとなっている。

 昨年は、多くの参加者が日本の無為無策に不満を爆発させ、「日本はアジアを経済危機から救おうとしないどころか、危機の重要な原因になっている」「日本が世界恐慌の引き金を引きかねない」といった声がこだました。

 現実に97年11月の金融パニックをきっかけに顕在化した金融デフレの圧力が、98年には日本経済を一時、崖っぷちに追い詰めるに至った。

 しかし、転落寸前のタイミングで金融財政両面での経済刺激策と金融システム不安への対応策が打ち出された。遅きに失する措置ではあったが、ともかく政策が必要な方向へ動いた。アジアの経済危機への対応策としての「新宮沢構想」も具体的な形で打ち出された。この構想は、当のアジア諸国が大歓迎しただけでなく、米国なども積極的に評価した。

 改革のスピードギャップ

 会議主催者の「世界経済フォーラム」(WEF)が発表した「アジアの競争力報告」99年版は、日本が必要な政策を講じだしたことを認め「金融再生策を本気で実行し、アジアの経済危機緩和のための支援に成功するなら、日本経済は99年第二四半期にも回復に転じうる」と予測している。

 もちろん、各国の目は依然厳しい。ゴア米国副大統領は「米国は日本に政策を変えろとしつこく言い過ぎると思っている日本人がいることは承知している」と断りながら、次のように「期待」を表明した。

 「世界は、日本が世界第二の経済大国としての責任を果たす形で変わってくれるかどうか見守っている。日本はやろうと思えばできるはずだからである」

 また日本非難が後退した背景には日本の政策変化だけでなく(1)アジア諸国が危機発生直後のパニック状態から抜けだし、状況改善の手ごたえを感じだした(2)昨年までは人民元は絶対切り下げないと繰り返していた中国の通貨政策の先行きに懸念をいだく国が増えた(3)米国景気にもバブル色が加わり、先行き不透明感が生まれつつある――などの要因もあると思われる。

 だが、日本としてはこうした空気の変化を喜んではいられない。

 第一に、経済・産業構造の変化や企業経営の変化のスピードに内外ギャップがあるからだ。それはむしろ拡大している。

 会議での個別のテーマをめぐる議論では、しばしば「日本」が完全に姿を消している。情報技術、知識集約型産業、グローバル経済への対応といった21世紀をにらんだテーマでは、日本の存在感がほとんどない。日本は20世紀の最後の10年における政策と企業経営の失敗との関連で議論されることが多い。

 金融を含む産業の再編成に関しても、欧米を中心に次々に発表される国境を超えた野心的、戦略的な合併・提携のうねりと比べると、日本の再編成の多くは消極的に映る。

 危機意識が生む行動力

 第二に、政策は良い方向に動きだしたとしても、実体経済、とりわけ企業の体力、活力が本当に回復するのかどうか、各国は懐疑的である。

 企業が悲観主義を捨てるのはいいが、楽観主義はまさに尚早である。悲観主義は「何をやってもダメだ」となるから無為無策に通じ、企業も経済も委縮するだけとなる。また積極的な行動を伴わない楽観主義は何も生まない。日本がいま必要なのは現状を打ち破り前進しようとするエネルギーのもととしての危機意識ではないか。

 東京市場での株式売買のほぼ半分が外国人投資家によって行われている。外国の目を、外圧として無視できる時代は終わった。

 ダボスの会議では「グローバリゼーションはプロセス(過程)の段階ではなく現実の状態だ」とし「グローバリティー」(グローバル性)が標語となった。

 政策が着実に実行され、企業が危機意識を真の体力強化につなげられるか。できなければ「期待」は消え、日本の存在感はさらに弱まる。

 日本を取りまく世界のグローバル化のプロセスが本格的に勘さだしたのは、冷戦の終えん過程と情報通信を中心とする技術革新の加速が同時進行しだした80年代後半からである。ところがちょうどその時期、日本はバブル景気に浮かれ、90年代はその反動不況に振り回された。そうした内外ギャップも再確認したい。


【6】世界経済フォーラム年次総会閉幕へ(99.1.30 讀賣新聞)


 世界経済フォーラム年次総会閉幕へ
 金融将来像で米欧対立

 米:一層の自由主義を主張
 欧:市場に政治の介入必要


 【ダボス(スイス)2日=佐藤伸】世界の政財界のリーダーらが参加した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は2日夕、6日間の日程を終了し閉幕する。東南アジア、日本、ブラジルなどの経済危機が世界を揺さぶる中で開かれた今会議では、将来の国際金融システム像を巡って、一層の経済自由主義を掲げる米国と、市場に対する政治の介入を主張する西欧との亀裂が目立つ一方、グローバリゼーションの恩恵に浴する先進国と、そうでない途上国とのギャップの拡大を印象づけた。

 ルービン米財務長官は「世界経済再建の唯一の方策は国家間の障壁を廃して商品と資本を自由に流通させることだ」と述べ、現行のグローバリゼーションを徹底させるべきだとの立場を改めて強調した。

 欧州連合(EU)や日本は米国流の自由放任に対して金融市場を監督する国際的な常設委員会を設置し、経済危機に陥りそうな国々に警鐘を鳴らし、危機を未然に防ぐべきだと訴え、立場の違いを鮮明にさせた。

 これに対し、ルービン財務長官は「私は、26年間のウォールストリートでの経験と、6年間の米政権での経験から、危機を予見できる能力などはどこにもないことを悟っている」と語り、国際的監督機関構想を明確に拒否した。

 さらに、EUと日本は、国際的投資家ジョージ・ソロス氏のヘッジファンドがアジア危機の火付け役になったと見られる反省から、その規制を主張したが、ルービン財務長官は「ヘッジファンドを悪者扱いすべきでない」と発言するなど、対立を際立たせた。

 為替政策を巡っても、EUと日本は、欧州単一通貨ユーロとドルと円に一定の参考相場圏を設定すべきだと主張したのに対し、米国側は市場に委ねるべきだ、とする立場を強調した。

 米欧の立場の違いの一因は、EUが昨年のドイツの社会民主党主導政権の誕生を機に、社民主義に傾斜し、市場を政治がコントロールすべきだとの声が高まっていることにある。今年1月からの欧州通貨統合は、その意味で米国の経済自由主義に対する、欧州の砦を築いたとも言える。

 一方、マハティール・マレーシア首相やムバラク・エジプト大統領は、グローバリゼーションの「開放されたシステム」は先進国が享受しており、途上国はその恩恵にあずかれないと指摘した。ムバラク大統領は「グローバル・システムを正当化しても、貧困に悩む人々の数は2年前よりも多い。何かが間違っているという意識が広がっている」と途上国側の論理を展開した。

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Presented by. AKIO KIMURA (idatenmail@gmail.com)